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棚卸資産に関する諸論点

はじめに

重要な経営資源である棚卸資産については、会計・税務において多くの論点があります。棚卸資産の管理が不十分なために「あると思っていた棚卸資産が実は存在しない」あるいは「多額の含み損を抱えてしまっている」ということもあり得ます。また、不十分な管理は不正の温床にもなりかねません。本稿では棚卸資産の会計・税務上の論点について概括してみたいと思います。

棚卸資産評価

中国における会計基準では、棚卸資産は毎決算期ごとに取得原価と正味実現可能価額とを比較して、どちらか低い方の金額で評価しなければなりません。正味実現可能価額とは、棚卸資産を売却した場合に得られるキャッシュ・イン・フロー見込額を言います。よって将来のキャッシュ・イン・フロー見込額よりも高い価額で評価してはならないということになります。この考え方は日本の会計基準とほぼ同じです。例えば以下のような場合には在庫評価損引当金という形で将来のキャッシュ・イン・フロー見込額まで評価額を切り下げなければなりません。

①棚卸資産の市場価格が下落し続け、将来の回復が見込めない場合。
②原材料を使用して生産する製品の原価が、製品の販売価格を上回る場合。
③製品のモデルチェンジにより既存の在庫原材料がすでに新製品のニーズに適さず、かつ当該原材料の市場価格もその帳簿価格を下回る場合。
④企業の販売する商品が市場ニーズの変化により陳腐化し、市場価格が下落している場合。
⑤その他実質的に資産の価値が下落していると認められる場合。

しかしながら実際の経理実務において、まだ販売していない棚卸資産について将来のキャッシュ・イン・フロー見込額を算定することは難しく主観的判断に左右されてしまいます。その結果、在庫損失引当金の計上が十分ではないケースが多く見受けられます。このようなケースでは、親会社が連結財務諸表の作成時に在庫損失引当金の積み増しを行っている会社も多々あります。日本も同じですが、在庫の評価損は税務上の損金としては扱われないため、会計上の処理も積極的には行われないようです。

棚卸資産廃棄損

棚卸資産に関する損失を税務上の損金として処理するためには、実際に毀損した棚卸資産や販売見込みのない棚卸資産について、「評価損」ではなく「廃棄処理」をしてしまうことが考えられます。この方法なら税務上の損金として処理できる可能性があります。ただし、実際に損金として認められるためには、棚卸資産を廃棄するに至った経緯を税務当局に説明し承認を得なければならないですし、一定金額以上の棚卸資産廃棄損については外部の仲裁機関による鑑定証明も必要となります。このような手続きの煩雑さ、不確定要素の存在により、棚卸資産の廃棄処理も十分に行われない実務があります。

原価計算

棚卸資産価額は原価計算と密接な関係にあります。原価計算には、①棚卸資産の実際原価を算定する、②販売価格の決定に役立てる、③無駄な原価の削減に利用する、④予算の算定に利用する、⑤設備投資計画の意思決定に利用する、などの効果があり経営管理上重要な手続と言えます。

中国における原価計算は各社によってかなり差があります。日本と同程度の標準原価計算や予算原価計算を行っている会社もあれば、日本の上場企業の子会社であっても人件費を集計していない、あるいは間接費を按分していない会社も多々あります。ただ、総経理は共通して、自社の原価計算を充実させたいというご要望をお持ちのようです。

人件費を集計していないケースでは、すべての人件費を売上原価ではなく管理費用に計上しているケースと、売上原価への計上は行っているが製品への配分をしていないケースがあります。いずれも棚卸資産価額に人件費が含まれないことになってしまい棚卸資産の価額は正しいものとは言えません。工場作業員のお給料が固定給であり生産効率を軽視した作業を行っていることも相俟って、作業日報の記入・集計が困難なことが一因のようです。

経理担当者が工場に対して作業日報の記入方式や記入の必要性を指導すれば良いのでしょうが、実際には経理担当者は工場から上がってきた数字を集計する機能だけを担当しており、工場が正確に記入しないと経理は正しく計算できないという会社が多いです。また、総経理などのマネジメント層も、原価計算の必要性を認識しつつも、それ以前に品質確保、クレーム回避、仕損の減少に注力しているという実態があるようです。

間接費の配賦基準の正確性や仕掛品の進捗度の把握など細かい論点もありますが、計算コストと計算目的を検討しながら、社内ルールを決定することになります。原価計算に関する知識や計算方法を知っている経理担当者は少なく、原価計算制度の確立には日本本社からの集中的な指導が必須です。

棚卸資産に関しては、このような論点とともに、下表に例示したような点も良く議論になります。皆様の会社ではいかがでしょうか?

 

■棚卸資産に関わる論点
 ・長期滞留在庫の評価は適切か
 ・陳腐化した在庫の評価は適切か
 ・廃棄処理は適時に行われているか
 ・原価計算は正しく行われているか
 ・実地棚卸は期末に行われているか
 ・実地棚卸差異は正しく報告されているか
 ・会計システムと業務システムの在庫金額が一致しているか
 ・入出庫の受け払いは適時に行われているか
 ・入出庫の報告が適時に経理に報告されているか
 ・仕入処理の遅れによる簿外在庫はないか
 ・自社在庫と他社在庫が混在していないか
 ・自社の在庫保管場所は明確か
 ・計算上だけの理論倉庫が乱用されていないか

 

筆者

日本公認会計士 前島召治

法定監査業務、株価算定業務、財務調査業務、事業再生業務など会計税務に関する全般的なアドバイザリー業務の経験を持つ。致同会計師事務所ジャパンデスクのシニアマネージャーとして中国進出日系企業に対して様々なサービスを提供している。

 

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