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日中個人所得税制度の概要

中国における個人所得税の申告に関して、思わぬ申告漏れを起こさないためには日中双方の課税制度を理解することが必要です。本稿では、日中両国の個人所得税制度について概括してみたいと思います。

日中個人所得税の概要

まず、日中両国の課税の範囲について整理してみます。課税の範囲は「国内」の所得と「国外」の所得に分けることができます。「国内」と「国外」の区別は、「働いた場所」で判断されます。支払地は関係ありません。例えば中国への赴任者が中国で働き、日本法人から日本の銀行口座に給料を振り込まれた場合(いわゆる留守宅手当)、日本から見た場合には「国外」源泉所得になりますし、中国から見た場合には「国内」源泉所得になります。

日中両国の個人所得税に関して想定外の納税漏れを起こさないには、それぞれの国においてどういった場合に、「国内」あるいは「国外」の所得に対して課税されるのかということを把握しておく必要があります。

下表は日本国の個人所得税の区分と課税範囲です。

非居住者とは、日本国を1年以上離れる予定の者をいいます。よって、1年以上中国に赴任する予定の者(非居住者)は、国外源泉所得(中国での労働に対する対価)に対して日本においては課税されません。

下表は中国の個人所得税の区分と課税範囲です。中国の法制度でも「居住者」「非居住者」の区分はありますが、ここでは、中国での滞在年数による区分を示しています。

※国外支払の非課税処理は税務当局の許認可が必要

 

中国国内での労働の対価である以上、(日本で支給される)留守宅手当は中国国内源泉所得であり、たとえ1年未満の滞在者であっても、滞在日数の割合に応じて中国で課税されます(ただし183日未満の場合は免除される特例あり。下記参照)。

また、中国に滞在している外国人については、5 年を超えた段階で課税関係が変化します。すなわち、日本の賃貸不動産収入など、中国国外源泉所得についても中国国内において課税されることになります。

これを回避するためには連続して30日間、中国を出国することが必要です。急きょ30日間も中国を離れることは、日々中国で仕事をしている赴任者には困難なケースが多いです。よって、事前に一時帰任のスケジュールを管理することが、節税の観点から大切だと思われます。

税務リスク

日本法人から支給される留守宅手当てについて、中国で申告納税していない場合、ペナルティとして、多額の加算税(50―500%)と延滞税(18.25%)が課されます。しかも、脱税行為には消滅時効がありません。例えば月間10万円の申告漏れを5 年さかのぼって追徴された場合、50%の加算税が付加されたと仮定すると、1人当たり1千万円程度の追加納付をしなければなりません。

短期滞在者特例

183日免税ルールという言葉をよく聞くと思います。これは「中国での滞在期間が183日を超えない場合には、たとえ中国国内での労働の対価として得た所得であっても、中国国内での課税を免除する」という日中国間の租税条約です。世界の多くの国が183日ルールを適用しています。しかし、この183日ルールにも注意が必要です。単に183日という日数だけに注意しておけばよいかというと、決してそうではありません。日数以外にも、①中国の現地法人から給与が支給されないこと、②給与は中国の恒久的施設によって負担されないこと、といった要件が必要です。注意すべきは出張者自身が恒久的施設(PE)に認定されてしまうリスクです。この場合、一定の状況下では、個人所得税が課されてしまう恐れがあります。

日本と中国での二重課税

1年以上日本を離れる予定になく(日本の居住者)、かつ183日を超えて中国に滞在する者については、中国の滞在期間に相当する給与について、日本と中国の双方で個人所得税が課されることになります。そこで、この2重課税を救済するために、中国で納めた税金相当分を、日本の税金から差し引くことができます。これを外国税額控除といいます。

例えば、中国における工場設立に携わり頻繁に中国に出張していた者が、工場の設立遅延に伴い、当初の予定に反して183日以上中国への出張を繰り返したとします。日本においては、1年以上国外にいることを予定していませんから、居住者として個人所得税を納付しなければなりません。

一方で、中国においては183日を超えていますので、中国においても所得税が発生します。すなわち中国の出張日数に相当する所得税については、日本と中国の双方で一旦2重に課税されるわけです。そこで、居住地国である日本において、中国で支払った税金相当分を日本の税金から控除する手続を行うことになります。

筆者

日本公認会計士 前島召治

法定監査業務、株価算定業務、財務調査業務、事業再生業務など会計税務に関する全般的なアドバイザリー業務の経験を持つ。京都天華ジャパンオフィスのシニアマネージャーとして中国進出日系企業に対して様々なサービスを提供している。

 

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