中国ビジネス情報誌 Whenever BizCHINAから、お役立ち現地情報を発信中

※掲載内容は全て、誌面掲載時の情報です。

 
about_us
業界インタビュー

キャストコンサルティング(上海)総経理 前川 晃廣 氏-法務から労務、会計・税務まで 中国ビジネスの総合コンサルを提供


[ 2013-01-29 ]

中国経済の転換期に日中関係の悪化が重なり、日系企業の中国ビジネスにおける不確実性が増す中、豊富な経験と知見を備えたコンサルティングファームの存在感が高まっている。法務から労務、会計・税務、税関、マーケティングまで、日系企業が中国ビジネスで直面する問題点を総合的にワンストップで解決するキャスト・グループ。そのコンサルティング部門の中国法人総経理を務める前川晃廣氏は、クライアントからのさまざまな相談に日々正面から対応して、解決法を提案する傍ら、自ら主宰する「駐在員塾」を中心に、年間60日間以上の講演をこなしている。前川氏に「駐在員塾」の詳細とキャストの事業展開、自身の目標、それから日系企業が中国事業で注意すべきポイントや今後目指すべき方向性を聞いた。

 

4年目を迎えた「駐在員塾」
受講者数が1000人超に

―1日完結の8時間セミナー「駐在員塾」(基礎編)が今年で4年目に入りました。他に例を見ないロングセラー・セミナーになりました。

「中国11都市と日本4都市で開催し、おかげさまで基礎編だけで受講者数が1000人を超えました。基礎編を定期的に開催しているほか、中級編として税務を詳細に講義するコースや撤退実務に特化したコース、定年前後の駐在員向けに日本の年金制度や退職金課税を講義するコースなど、中国駐在員の方々が求めるテーマを随時選び、多角的に開催しています。

今後もニーズがあれば、地方都市や企業内のインハウスなどでも積極的に開催していきたいです」

―なぜ1日8時間のセミナーをひとりで担当されるのですか? かなり体力を消耗すると思いますが。

法務から労務﹆税務・会計、マーケティング﹆異文化コミュニケーションは﹆すべてが繋がっています。それらの繋がりを理解することで、中国を解く〝方程式〟の一端が見えてくるのです。1日の講義をひとりの講師が完結させることで、セミナーの最後に各要素が有機的に繋がっていることを皆さんに体感していただける仕掛けにしてあります。ひとりで8時間の講義を担当するのも、慣れればそれほど大変ではなく、終講時に受講者の皆さんから温かいお言葉をいただく度に湧いてくる心地よい疲労感を楽しみに、毎回新たな気持ちで登壇しています

専門家が有機的に繋がり 総合コンサルを提供する

―キャスト・グループについて教えてください。

「99年に日本で設立された弁護士法人が母体となり、東京を本社とするキャストコンサルティグが上海に全額出資の現地法人を設立。その現法が北京﹆大連﹆蘇州﹆広州﹆深圳と分公司展開をしてきました。グループの弁護士法人も上海、香港地区に拠点を置き、日本語と中国語の両方が堪能な弁護士、会計士、税理士などの専門家が協力し、グループ全体で弱点のない、総合的なコンサルティング業務を展開しています。社名のキャスト(CAST)は造語で、それぞれCompliance﹆Association﹆Speciality﹆Transparencyの頭文字をとったものです」

―キャスト・グループの強みは?

「コンサルティング業界に携わる人が常に意識すべき基本理念に〝MECE〟という考え方があります。漏れなく、ダブりなく』という意味です。コンサルタントは自分の知っている分野だけを披露しても、クライアントの求める要点に合致するとは限りません。また﹆発生する問題は多くの場合が複合的で﹆かつ時間とともに変化します。それら難題に正面から対応でき、近未来を予測して先手を打っておくという作業が、真のコンサルティングには求められるのです。

キャストの内部では、常に『各分野の専門家が互いの強みを出し合いながら、さらなる強みを創造する』という良い〝化学反応〟が起きています。それが大手上場企業から中小企業まで、幅広いクライアントにご支持をいただいている要因になっていると思います。これからも一緒に化学反応を楽しめる仲間をキャストに招き入れ、中国ビジネスにおける新たな〝発明﹆発見〟を続けていきたいですこうしたコンサルファームは非常に稀ではないでしょうか。

―「各分野の専門家がここまで有機的に繋がっているファームは、見たことがありません。

キャストでは、会員制サービスとして〝日中法令対訳データベース〟を提供しており﹆現在4500件以上の中国の法令の日本語完全対訳をネット上でご覧いただけるようにしています。最新法令も毎週翻訳してアップデートしており、多くの日系企業にご利用いただいています。このようなサービスも他のファームにはないと思います

撤退セミナーが盛況 〝中国現法20年論〟を提唱

―日中関係が大きく揺れ動く中、主宰される「撤退セミナー」が盛況と聞いています。

「最近、日本のマスコミでは中国現法の閉鎖がクローズアップされていますが、撤退の理由は業況不振のみならず、中国各地に設立した複数拠点の統廃合や都市化による区画整理など、その理由はさまざまです。また、撤退の形態は、解散・清算する場合もあれば﹆出資持分の有償譲渡や破産などいくつもあります。

撤退の実務においては、法務はもちろんのこと、税務・会計、税関、そして多くの日系企業がまだ気づいていないのですが﹆労務が大きな問題になります。これらに関する近い将来起こりうる〝絵〟をしっかり把握した上で、現地法人を運営していくことが大切です。

中国現地法人の設立について十分な経験をお持ちの日本企業は多いですが、撤退の経験があるところはまだ少なく、加えて地方都市における撤退作業では行政側の経験値が乏しいか、まったくないケースもよくあります。キャストのように豊富な実績を持つファームが﹆各社の撤退実務を短期間かつ確実にリードさせていただくことがベストだと感じています

―前川さんが提唱されている〝中国現法20年論〟とは?

「製造業は最大50年間の土地使用権を購入できるので﹆現地法人を設立するときに経営年限を50年と定めるケースが多いのですが﹆必ずしも現法を50年間存続させなければならない訳ではありません。

設立して10年も経てば、悪意はなくとも税務や税関関係で〝見えざる疾患〟が溜まってくるでしょうし、近隣の都市化による区画整理などで立退きの圧力を感じることもあるでしょう。従業員との労働契約も10年を超えると無固定期間契約を締結しなければならないなど、設立後10年を超えたあたりから、言い換えると3代目か4代目の総経理が赴任した頃から、ゴーイングコンサーン(会社は永久に存続するものという考え方)を前提としていることに起因する経営上の苦労が増加しはじめます。

また、08年の企業所得税法の施行など、外資系企業に対する多くの優遇策がなくなり、現法を無理して長く存続させるメリットは薄れつつあります。そこで 『 10年超えたら撤退も視野にいれましょう『 20年目を迎える頃には畳んでもいいように備えておきましょう』というのが、この中国現法20年論の主張です

―せっかく育てた企業を畳むことに躊躇する経営者も多いのではないでしょうか。

「自然人には自然の寿命がありますが、法人の寿命はどのようにも決められます。20年未満で撤退しても、また新しく法人を興して、そこに資産を譲渡すればいいのです。この考え方は、台湾地区や香港地区のオーナー経営者なら、議論するまでもなく当然のことと考えています。法務、会計・税務、労務などの問題点を細かく把握した上で、『古い会社を畳む』作業と『新しい会社を興す』作業とを同時並行して行うのです。日中関係のみならず、世界情勢も不確実な時代ですので﹆不測の事態に機動的に対応できる準備をしておくことが、企業経営に求められているのではないでしょうか

日中両国が本当に分かり合えるために努力を続ける

―キャストは近年、M & A(企業の合併・買収)事業に注力し、多くのデューデリジェンス(詳細調査)を請け負っていると聞きます。前川さんはM&A事業では、どのように活躍していますか。

「リーマンショック前の中国における日系企業関係のM&Aといえば、日本企業が中国企業を買収するケースが多かったのですが、最近では日系企業の事業の一部もしくは全部を中国企業や外資系企業に売却したり、香港・台湾地区の企業も巻き込んだ複数のプレーヤーによる企業売買が行われたりと、新しい展開を見せています。

私が銀行時代に取得した証券アナリストの資格と知識が﹆こうしたM&A案件で生かされています。

M&Aや合弁・出資交渉においては対象企業の企業価値評価はもちろんのこと、中国側がどのような知識や考え方を持って交渉に臨んでいるかの仮説を立て、交渉の各場面で日本側がどう対応するべきなのか、クライアントにアドバイスしています

―今後、前川さんが目指すものは?

「中国でのコンサルティング業は、クライアントの相談に少しでもいい加減な回答をすれば、相手を〝地獄〟に落とすことにもなりかねません。クライアントには、自分とキャスト・グループのすべての能力を傾注し、ベストなソリューションを提供しなければなりません。いま48歳ですが、後半の人生でもコンサルタントとして吸収することは山ほどあると感じており、これからも研鑽を積んでいく覚悟です。

日本人が疑問に感じる中国の現状に対し『なぜ中国はこうなのか』『なぜ中国人はこう考えるのか』という視点を分かりやすく日本の皆さんに解説していくのが、これまで30年以上中国と向き合ってきた私の使命だと考えています。今後も引続き、微力であっても日中両国が本当に分かり合えるようになるためのお手伝いがしたい、また自らの中国理解もさらに深化させていきたいです。そしてできるならば、各分野の専門家との協働で、後世のために〝Sinology〟(中国学)を立ち上げたいです。中国を理解するには並大抵の努力と時間では不可能です。もしも寿命が300年あっても﹆やっぱり中国研究を続けているでしょうね」



人民元
 その他、為替レートは、こちらより。
やまびこ上海 ウェネバー人材 ウェネバートラベル
ウェネバーオンライン らくらくプレス