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業界インタビュー

IIJグローバルソリューションズ(中国)董事長 西俣辰男氏 – “持たないプライベート・クラウド” 中国市場で提供開始


[ 2016-01-19 ]

「自動車に例えれば、マイカーとバスの良いトコ取りをした自動車配車サービスのようなもの」だという。総合ネットワーク・ソリューション事業者のインターネットイニシアティブ(IIJ)は2016年、中国市場で、パブリック・クラウドとプライベート・クラウドそれぞれの利点を組み合わせた仮想化プラットフォーム「VW」シリーズの提供を始める。中国系通信キャリアの上海データソリューション(SDS)と提携して、中国系・日系双方のマーケットを開拓する。初年度に10~15社からの受注を見込んでいる。現地法人IIJグローバルソリューションズ(中国)の西俣辰男董事長に話を聞いた。

China201602, IIJ, 西俣董事長

西俣辰男(にしまた・たつお)氏●1988年早稲田大学理工学部応用物理学科修士課程卒業。88年日本IBMシステムズエンジニア、99年AT&Tジャパン営業部長、09年同社取締役NI事業部長、10年IIJグローバルソリューションズ取締役専務執行役員経営企画本部長などを経て、16年4月よりIIJグローバルソリューションズ(中国)董事長総経理就任予定

 

1. 低コストで自由度の高い設計を

IIJは1992年設立。日本で初めて商用インターネット接続サービスを確立したパイオニアだ(※)。インターネット接続サービスをはじめ、クラウドやセキュリティなどのアウトソーシング・サービス、広域通信網サービス、システム・インテグレーションなど多種多様なITソリューションを提供しており、大企業や官公庁を中心に8500社以上のクライアントを有する。中国には2012年1月に進出、中国電信と提携して13年からクラウド「IIJ GIO CHINAサービス」を提供してきた。

※一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター「インターネット歴史年表」より

──まずIIJの強みについて。

「IIJは日本全国主要都市に、大容量バックボーン(ISP間などを結ぶ高速大容量の幹線ネットワーク)に直結した20のデータセンターを保有している。インターネット接続サービスの契約総帯域は1982Gbps以上で、インターネットバックボーンネットワークの稼働率は99.9999%。富士キメラ総研のレポートによると、2011年と12年の2年連続で当社は日本のパブリック・クラウド市場でシェア1位を獲得している。高い技術力を持つエンジニアが、24時間365日体制でネットワークを監視・運用しており、メールでは約100万アクセス、Webでは約70万アクセスを制御するゲートウェイ環境を提供している。クラウド分野では、日本では約1340社に2500システム、中国では約30社に40システムの導入実績がある」

──今回、中国で新たなクラウド・サービスを投入する。

「中国市場では現状、プライベート・クラウドかパブリック・クラウドのどちらかしか提供されていない。新しく投入するVWシリーズは、その双方の利点をひとつにまとめた“One Cloud”ともいうべき、これまでの中国では提供されてこなかった技術だ。

プライベート・クラウドとは自社でサーバーを購入・占有する利用形態で、オンプレミスとも呼ばれる。安全性が高く自社ニーズに特化したシステムを構築できることが利点。主に会社内の機密情報が多く取り扱われる社内システムや、中核業務用アプリなどに用いられる。ただし設備投資など初期コストが大きく、業容の拡大・縮小にあわせてシステムを柔軟に拡張・縮小させることは難しい、という難点もある。

パブリック・クラウドとは、外部のサーバーをサービスとして利用する形態で、ホームページをはじめとする一般的な外部向け情報公開用インフラに用いられることが多い。自前のITリソースを所有する必要がないため初期投資を低く抑えられ、既製のITシステムを利用するので短時間で機能を使えるようになり、システム運用費もサービスの利用分のみに低減できる。ただし、業者側が提供しているOSしか利用できないので、必ずしも自社ニーズに適したシステムを構築できるとは限らない。

それらに対しVWシリーズでは、プライベート・クラウドと同じく安全性が高く自社ニーズに特化したITシステムを、パブリック・クラウドと同じく外部リソースから利用できるようにした」

VWシリーズ、プライベート・クラウド、パブリック・クラウド(圧縮)

“持たないプライベート・クラウド”の利点。OSやシステム構成の自由度・柔軟性と、オンデマンド性や初期コストの低減を両立させる

──双方の利点を両立させる仕組みは。

「一般のパブリック・クラウドではサーバー内のOS(仮想サーバー)を貸し出すが、VWシリーズではサーバーそのものを貸し出す(仮想化プラットフォーム)。そのため、サーバーを占有するプライベート・クラウドのメリットを、資産を保有しないパブリック・クラウドのコストパフォーマンスと手軽さで得られるようになる。いわば“持たないプライベート・クラウド”だ」

──分かりやすく例えると。

「自動車に例えれば、パブリック・クラウドはバスで、プライベート・クラウドは自家用車に相当する。バスは購入費も維持費もかからず、乗車した分だけ対価を払えば良いが、座席に座れる保証はないし、バス会社の定めた時間と路線に合わせて利用しなければならない。自家用車はいつでも使える半面、初期投資が大きく維持費もかかる。また、乗車人数に合わせて車種を変更できるわけではない。

“持たないプライベート”であるVWシリーズは、いうなれば配車サービス。乗車人数や乗車用途に合わせた車種を手配できる上に、購入費も維持費も不要で、使った分だけ対価を払えば済む。見知らぬ他人と乗り合わせないので安全性も高い。さらに自家用車と違ってプロのドライバーと整備士のサービスが得られ、駐車場も必要ない」

China 201602 IIJ, VWシリーズ, 自動車

自動車に例えた場合、VWシリーズは路線バスとマイカー双方の利点を兼ね備えた配車サービス的な位置づけになる

──具体的な機能は。

「仮想化では世界有数の商用実績を誇るVMware社の技術をベースに、IIJの16年間のクラウド運用実績ノウハウを活用して、サービスとして確立させる。

サーバー、ネットワーク、ストレージはいずれも顧客特化型のリソースとして提供する。OSは約80種類そろえており、顧客独自にカスタマイズしたOSも利用できる。VMware社製vSphere ESXi5のほぼ全機能を開放することで、企業のクラウド運営のスピードや柔軟性に寄与する。

仮想マシンの処理能力については、一般のプライベート・クラウドでは単体メモリが対応しているのは1GBから最大32GBまでだが、VWシリーズではメモリをMB単位で指定できる上に最大192GBまでサポートしており、ERPなど大型のシステムの運用基盤として活用できる。このプラットフォームはSAPによる公式認証も受けており、社内OA/ERP/CRMやSAP Oracle/VDIなど、さまざまなサービスシーンに対応可能となっている。

さらに、IT設備から業務アプリケーションまでの全てを当社がワンストップで管理するので、クライアントはコア業務に専念しやすい。もちろんパブリック・クラウド同様、必要な期間・規模だけ契約して使うことができる」

──提携先のSDS社について。

「SDSは上海浦東地区への企業誘致を目的に上海市が設立したデータセンター事業者で、01年から事業を開始している。外資系企業や金融系など大手中国系企業を顧客としており、顧客数は500社を超える。データセンターの総床面積は1万3000㎡。年間売上高は約5億元。情報セキュリティ・マネジメントの国際規格ISO27001などの認証も取得している。本格的なクラウド・サービスは提供していないが、SI型のプライベート・クラウドは15年春から提供を始め、専任の営業部隊も発足させた」

 

2. 日本での実績生かし、サービス提供

IIJは日本で2012年からVWシリーズを提供している。中国は日本に次いで世界で2番目の提供エリアとなる。日本ではVWシリーズはどのように使われているのか。そして中国ではどのような市場ニーズを狙っていくのか。

──日本でのニーズは。

「日本ではコア業務用のシステムとして、複数の工場や多拠点のシステム統合に使われるケースが多く、ひとつのクライアントで物理サーバー3000台をクラウド化したこともあった。現在、1340社の導入実績がある。

また3.11震災以降、DR(ディザスター・リカバリー)としてのパブリック・クラウドの有用性が注目されるようになったが、リカバリーには本体とバックアップ用が同じシステムであることが重要になる。そのためVWシリーズをまずバックアップ・システムとして導入し、実際の使い勝手を確かめながら、本体のシステムを順次VWシリーズに移行させていく、という利用者も目立つ。プライベート・クラウドのサポート期限が切れるタイミングで、全システムを移行させるわけだが、当社でもプライベート・クラウドとパブリック・クラウドをシームレスにつなぐシステムを提供し、その移行期間をサポートしている。これらの実績と経験を踏まえて、中国でもサービス展開する」

──中国では、どのようなニーズを狙うか。

「中国のパブリック・クラウド市場では、既にアリババなどの強豪がサービス展開しているが、プライベート・クラウド市場はまだ攻める余地が大きく、VWシリーズはそのブルー・オーシャンを狙えるサービスだ。

日系市場で主流となるのは、日本本社がVWシリーズを導入しているケース。またコストの高騰などに起因し、中国に展開した複数の現地法人のシステムを統合する動きが増えていることも追い風だ。日中問わずパブリック・クラウドの導入に際してマーケットが関心を寄せるのは、安全性と、システム全体の移行がスムーズにできるか否か。円滑な移行にはシステムとパブリック・クラウドの互換性のほか、移行作業の経験と技術がものをいう。その点でも当社はライバルから抜きん出たサービスが可能と自負している。

また、当社は中国系企業と組んで中国系市場の開拓にも注力している。日系IT企業の多くは日系マーケットを主ターゲットとしてきたが、当社はより深く中国市場に踏み込んでいく」

 

艾杰(上海)通信技術(IIJグローバルソリューションズ中国)

住所:上海市長寧区古北路666号嘉麒大厦7楼703A室

TEL:021-6139-9111

Web:http://cn.iijglobal.com

E-Mail:gschina-sales@ap.iijglobal.com

 

 



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