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業界インタビュー

致同会計師事務所 日本公認会計士近藤省平氏 – 国際会計事務所メンバーファーム, 日系向けフォレンジック開始


[ 2016-04-05 ]

国際会計事務所グループGrant Thornton International(=GT、本部ロンドン)の中国唯一(※1)のメンバーファーム致同会計師事務所は2016年から、日系企業向けにフォレンジック(不正調査業務)サービスの提供を開始した。欧米系企業などに対しては5年以上前から提供してきたが、日系向けにもサービス体制が整ったことからスタートした。GT日本メンバーの太陽有限責任監査法人から致同に駐在している日本公認会計士の近藤省平氏に、直近の会計・税務ニーズも交えて話を聞いた。

 ※1:GT公式ウェブサイトより

Whenever BizCHINA, 2016年4月号, 致同会計師事務所, 近藤氏

近藤省平(こんどう・しょうへい)氏●2010年公認会計士試験論文式合格。学校法人にて予決算業務や税務申告業務を担当。13年7月太陽有限責任監査法人入所、金融商品取引法・会社法、および公益法人の監査業務、株式公開支援業務に従事する。15年7月より致同会計師事務所上海オフィス駐在。

 

1. 日本デスク&中国デスク

英Grant Thorntonは収益規模世界第5位(※2)の大手会計事務所で、世界130カ国以上に展開するメンバーファームのスタッフ数は計4万2000人以上、合計収益額は46億ドルにのぼる。各メンバーファームはそれぞれ独立して運営されているが、GTの品質管理方針に基づき組織化されている。中国では致同会計師事務所グループが、日本では太陽有限責任監査法人グループがメンバーファームとなっており、中日双方の企業の活動を支えるため中国側には日本デスク、日本側には中国デスクを開設している。

 

──致同の概要を。

「致同──GT中国は、1981年に財政局・税務局出身の中冊公認会計士が北京で設立した北京会計師事務所を母体として、35年にわたって事業展開してきた。北京、上海、広州、蘇州、大連、成都、香港地区など23拠点あり、グループ全体では中国公認会計士約700人、中国税理士約120人、中国登録資産評価士72人を含む従業員数約3300人を擁し、クライアント数は3000社以上にのぼる。会計・税務・コンサルティングの3つを主要業務としている。

証券業務と財務諸表監査業務および国有企業の監査資格を授与されているため、約160社のA種株式市場上場コングロマリットが、当事務所と監査契約を締結している。また、米国PCAOB(公開会社会計監査委員会)の登録ファームでもあり(※3)、ニューヨーク証券取引所など米国株式市場に上場している中国企業6社とも監査契約を締結している。GTには09年に加盟した」

──貴事務所の差別化ポイントは。

「日系企業にとって中国における会計事務所は、大手外資系事務所、中国大手会計事務所、ローカル中小事務所、日系会計事務所の4つに大別できる。大手外資系事務所はBIG4とも呼ばれ、経営層もクライアントも欧米勢が中心だが、日本人が駐在するケースも多い。中国大手は大手企業・国有企業を顧客に持ち、日系企業がクライアントとなるケースも少なくない。中国国内の評価は高いが、日本人駐在員や日系企業向けサービス部門まで備えた事務所は限定的だ。ローカル中小となるとサービス水準は千差万別で、日本語サービスはまず期待できない。日系会計事務所は、経営層は日本人で日本人が駐在しているが、現地法人設立や記帳代行などの業務にサービスが限定される例が多い。

当事務所はBIG4に比べれば規模が小さい分、スピーディできめ細かなサービスを比較的リーズナブルな価格で提供できる。中国の大手事務所として、コンプライアンス業務を含めた広範な業務ライセンスを持つとともに、GTメンバーとして国際的な品質管理プロセスに基づいたサービスを提供している。日中それぞれの公認会計士がタッグを組んで動くため、中国事情に精通したサービスを、日本企業ニーズを汲み取った上で提供できることも強みだ」

──日系企業向けのサービス体制は。

「日本デスクを北京、上海、広州に設置し、日中英韓の4言語に対応可能な専門家によるサポート体制を整備している。中国本土における日系子会社の経営・管理に携わる日本人を対象にしたサービスデスクで、私のようにGT日本(太陽有限責任監査法人)から派遣された駐在員を中心に、専門的かつ総合的なサービスを展開している。

日本デスクには現在、日本公認会計士3人、中国公認会計士2人、日本税理士1人、アシスタント15人が配属されている。また、東京と大阪にあるGT日本の中国デスクには、日本公認会計士1人、日本税理士3人、アシスタント2人が配属されている」

──クライアント数など実績は。

「現在、日系クライアントは約100社あり、年間300~500件ほどの相談を受けている。収益ベースでは、日本デスクを設置した2011年以降、年率20%程度の増収をつづけている」

──中国企業側からGT日本の中国デスクへの依頼は。

「中国から日本への投資は増えており、当事務所も中国系企業による日本企業のM&A関連の依頼を何件か引き受けたが、日本側も外資を受け入れる経験が少なく、制度的にもスムーズに進みにくいケースが目立つ。日本の銀行は非居住者口座をつくることは可能だが、中国からの送金に対してスムーズに進まないケースが多く、中国企業が日本法人を立ち上げようにも、日本側に受け皿を用意できず進めなくなってしまう場合がある。しかし中国の経済規模は既に日本をはるかに上回っており、日本経済の今後を考えれば、より外資に開かれた国づくりを進めることが得策ではないだろうかとも感じている」

※2:会計士や財務スタッフ向け英国情報誌Accountancy Age記事“Top 50+50 Firms 2015”より

※3:PCAOB公式ウェブサイト“Non-U.S. Registered Firms”参照

 

2. 移転価格税制や資産モニタリングの依頼が増加

2015年はLIXILや江守グループホールディングスといった大手日本メーカーが、中国におけるグループ会社の不正会計で巨額の損失を計上、現地の監査体制の重要性が改めて認識された。会計・税務・コンサルティングの各業務について、直近の需要動向を聞いた。

──どのような相談・依頼が増えているか。

「目下、国際会計基準(IFRS)を導入する国が増えており、当事務所にもグローバルに監査対応できる会計事務所ということで、その関連の相談が多い。IFRSへの準拠という点では中国の会計制度は日本より先進的で、2007年より施行されている新企業会計準則はIFRSとの差異を解消することを目的に作成された会計基準であり、例えば企業の決算日は法律で12月31日に統一されているし、公正価値モデルの基本的な考え方を採用している。もっとも、中国がIFRSに倣う動きを進めていることは周知のことだったので、この分野では企業側も落ち着いて対応している。

より悩み深い相談が多いのが税務分野だ。ホットなテーマは移転価格税制(税率の低い国に所得を移転する租税回避行為への対策税制)。中国では09年に整備され、15年9月、それまでの運用経験をベースにOECDのBEPS(Base Erosion and Profit Shifting=税源侵食と利益移転)行動計画も踏まえて、大掛かりな法改正がなされた。改正法の公布はこれからだが、グローバル企業の間では情報収集の動きも活発化しており、当事務所のセミナーでも定員60人の会場が募集開始から4営業日で満席になるなど大きな反響が出ている。移転価格税制に関連する国税当局との交渉依頼も、15年末ごろから急増している。

これに限らず中国では近年、税制の改正が相次いでおり、情報をキャッチアップしていく必要があるだろう」

──コンサルティング分野では。

「中国事業が一定年数を経過して成長の壁に直面した企業から、事業再編や投資の再構築に関する相談が増えている。また、中国進出から年数が経って調べてみたら資産が毀損していることが判明した、というケースもあり、中国現地法人の資産モニタリングや、内部統制の仕組みづくりに関する相談も目立つ。当事務所の経験でも、感覚的に見て地場系・個人企業の50%以上は二重帳簿が存在しているが、こうした暗部は現地事情に精通した当該国の会計士でなければ見抜くことは難しく、当事務所が日中両国の公認会計士を組んで動かせている大きな理由でもある。マーケティングなどは現地化しても、財務・会計面のマネジメントは日本本社が掌握するか、信頼できる外部の専門機関に任せる必要があるだろう。LIXILや、中国事業の損失が巨額になり日本本体が民事再生に追い込まれた江守グループのケースは、対岸の火事ではないといえる」

Whenever BizCHINA, 2016年4月号, 致同会計師事務所, 移転価格税制セミナー

反響が高まっている、移転価格税制関連のセミナー

 

3. 不正調査等業務「フォレンジック」

フォレンジックとは横領や情報漏洩、不正会計などに対し、法廷で使用するための証拠収集や調査分析をおこなう業務。つまり当初から法廷闘争や刑事事件を想定した調査業務であり、専門的かつ高度な調査スキルが要求される。訴訟先進国では既に一般化しており、致同でも欧米系クライアントなどには提供してきたが、新たに日系企業にもサービスを開始する。

──具体的にはどのような業務か。

「例えば横領事件の場合、容疑者である従業員のパソコンやモバイル端末を回収し、消去されたデータなども専用ソフトで復元して証拠となり得るデータを確保、それらを公証局に提出し公証(法廷で使える証拠としての認定)を受ける。中国の場合、発票が偽造されたものか否かなどを調べる文書フォレンジックといった特有の業務もある」

──探偵業にも聞こえるが。

「一般的な会計・監査業務と異なり、民事より刑事領域に踏み込んだ業務でもあるので、その意味で探偵業務に近いともいえる。フォレンジック業務は公認不正監査士のライセンスを保有する専門家たちが手掛ける。日本ではなじみが薄いが、訴訟大国の米国などでは珍しくなく、当事務所のフォレンジック業務も米国からの駐在員が主管している。年間100件以上の依頼があり、中国の複雑なビジネス環境においてコーポレート調査や訴訟事件は増加の勢いが絶えない。日系企業にも提供する体制が整ったので、これから需要の開拓に乗り出していく」

Whenever BizCHINA, 2016年4月号, 致同会計師事務所, フォレンジック

被疑者のパソコンデータなどをチェックし、証拠を確保する(写真はイメージ)

Whenever BizCHINA, 2016年4月号, 致同会計師事務所, フォレンジック

被疑者のハードウェアを、致同の専門技術者と外部機関の文書レビュー担当者らがチェックする

 

 Grant Thornton 致同

住所: 上海市西蔵中路268号 来福士広場45階

TEL: 021-2322-0200(日本デスク)

Web: www.grantthornton.cn

E-mail: kondo.shohei@cn.gt.com

 



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