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業界インタビュー

Dassault Aviation Falcon Asia-Pacific(ダッソー航空アジア太平洋本部) 北東アジア部門Senior Vice President, Pierre Delestrade氏 – 中国は世界第2の市場、最新ジェット機8X初披露


[ 2016-06-07 ]

世界初の大西洋単独無着陸横断飛行を達成したチャールズ・リンドバーグが、パンアメリカン航空の顧問としてチャーター用機材を探していたとき、“We found the birds!”と一目ぼれした飛行機がある。フランスの航空機メーカーDassault Aviation(ダッソー航空)が開発したビジネスジェット機Falcon 20だ。その名門ブランドの最新モデルで、開発最終段階のFalcon 8Xがこのほど、上海虹橋空港で中国デビューを飾った。中国で利用量が増大しており、日本のものづくりとも縁の深い同ブランドにフォーカスした。

Whenever BizCHINA, 2016年6月号, Dassault Aviation, ダッソー航空, Falcon 8X, Pierre Delestrade

対日営業のディレクターでもあるDelestrade氏。Falcon 8Xキャビンにてインタビュー

 

ジェット機見本市ABACE

アジア地区におけるビジネスジェットの年次見本市ABACE(Asian Business Aviation Conference and Exhibition)が4月、上海虹橋空港で開催された。主催はNBAA(全米ビジネス航空協会)。ジェット機からヘリコプターまで取り混ぜて35機が実機展示された。出展企業は160社以上で、そのうち4割以上をアジア企業が占めている。足元の景気の影響もあり、出展機数は前年比3機減と、2012年以降で初の落ち込みとなったものの、各出展機ではメーカーと招待客の間で購買交渉が次々におこなわれ、依然としてマーケット側のデマンドの底堅さが感じられた。

今回、注目を集めたのが、女性初にしてアジア出身者で2人目(※1)となるICAO(国際民間航空機関)事務局長のFang Liu博士による基調講演。1987年からCAAC(中国民間航空局)でキャリアを積み、2007年からICAOのAdministration and Service部門でディレクターを担ってきた人物だ。Liu博士の事務局長就任は、航空分野におけるアジアの重要性の高まりを物語る。また、彼女がABACEの基調講演に登壇したことは、アジアにおけるビジネスジェット利用の拡大が、国際航空行政における重要テーマに位置づけられている証左といえる(アジアにおけるビジネスジェット利用環境の整備は、APEC2015の交通大臣会合の声明にも盛り込まれている)。

そして今回のABACEにおけるもうひとつの注目トピックが、フランス製ビジネスジェットFalcon 8Xの中国デビューだった。

 

※1:ICAOの2015年3月11日付発表より

Whenever BizCHINA, 2016年6月号, ビジネスジェット

ビジネスジェット●企業用プライベートジェット機。時間・路線に縛られず移動でき、フライト中も会議や商談、オフィス業務をおこなえる効率性が特徴。9.11テロ後はリスク回避目的の利用も増えた。多用している日本の大手メーカーいわく「グローバルビジネスでは使わなければ獲得できないチャンス、つぶせないリスクが厳然と存在する」。

 

デビュー早々、中国初受注

利用増で、運用サポート体制強化

2016年はDassault Aviationの創立100周年の節目にあたる。創立当初はフランス政府からの軍用機需要が主力事業だったが、1930年代から民間機開発に乗り出し、エールフランスの定期便などに使用されていた。

民間ジェット機開発が黎明期を迎えた50年代、同社もビジネスジェットの開発に着手し、60年代初頭Falcon 20を市場投入する。今に続くFalconブランドの誕生だ。同時に、民間機需要が増大していた米国に新たな活路を求め、大規模なセールス・プロモーションを展開。63年にパンアメリカン航空からチャーター事業用機材として40機の確定受注、120機のオプション受注を獲得する。冒頭のリンドバーグのエピソードは、このときのものだ。

70年代には新型機種を相次いで投入。さらに欧州でもビジネスジェットが普及期を迎えると、Falconファミリーは押しも押されもせぬ名門ブランドの一角にのし上がっていく。

現在までの累計デリバリー数は2000機を超えており、現役ラインナップは日本-東南アジア間を直行圏内とする中距離機から、ユーラシア大陸を横断できる長距離機まで、幅広い移動需要をカバーしている。企業の出張ツールとしてだけでなく、スイス政府や日本の海上保安庁はじめ、さまざまな国で政府専用機としても多用されている。

Whenever BizCHINA, 2016年6月号, Dassault Aviation, ダッソー航空, Falcon 8X

Falcon 8X。4週間がかり、10万kmにおよぶ世界各地での実地フライトテストの途上で中国でのお披露目となった

 

──Falconファミリーは3発エンジンが特徴だが、利点は。

「Falconファミリーには双発エンジン機と3発エンジン機があるが、3発エンジンの利点は第一に、エンジンのひとつに不具合が生じても双発エンジン機と同じ条件で飛行できること。安全性に優れ、ETOPS(※2)ルールの制約を受けないので、より効率的な飛行ルートを設定できる。またエンジン出力が大きいため、同クラスの双発エンジン機では発着困難な短距離滑走路や標高の高い空港も利用できる。エンジンによる発電量も多く、アイドリング中に用いる電力も確保しやすい。最新機種の8Xも3発エンジンだ」

──Falcon 8Xの特長は。

「まず、Falconブランド史上最大のモデルであること。航続性能は1万1945kmで、現役最大機種のFalcon 7Xより900km以上長い。上海とパリ、東京とジュネーヴ、北京とロサンゼルスなどをノンストップで直行できる。

次に、7Xに比べ機体サイズを前後に1m長くしたことで、クルーレスト(客室乗務員の寝室)を確保しやすくなった。これは保安上、大きな意義がある。長距離飛行やフライトが連続する出張が多いユーザーは、クルーレストを大きめに設計してクルーの疲労軽減を図ることができるからだ。

コックピットには新開発のEASyⅢを導入する。ハネウェルと共同開発したEASy(Enhanced Avionics System=強化型航空電子機器)の第3世代で、新たに大型ヘッドアップ・ディスプレイを搭載しており、低視界飛行時における周辺情況の伝達性能を強化している」

Whenever BizCHINA, 2016年6月号, Dassault Aviation, ダッソー航空, Falcon 8X, キャビン

会議、オフィス業務、会食と多彩な用途に使えるFalcon 8Xのキャビン

──需要は。

「受注数は非公表だが、今オーダーが入っても納品は2018年以降になる。デリバリー開始は16年8~9月の見通しなので、ほぼ2年待ちだ。中国でもABACE開幕後に初受注を獲得した」

──中国市場の需要は。

「景気の影響もあり新造機の売れ行きは鈍いが、利用量の増加に伴うアフターサービス需要は伸びている。Dassaultグループでビジネスジェットの運用サポートを手掛けるDassault Falcon Service(DFS)は、上海虹橋空港でオーストラリア系ビジネスジェット運用サポート大手Shanghai Hawker Pacificと合弁でサービスを展開しているが、Falconファミリーの15年の整備オーダー件数は、前年比40%増の伸びを示した。

また当社は15年、中国の大手チャーター企業Deer Jetと提携し、北京首都国際空港におけるFalconファミリーの整備体制を強化した。Deer Jetは米連邦航空局から修理拠点の認定を受けており、Falconに対して3人の専属技術者を配備、24時間体制でAOG(交換部品緊急通関業務)も含めた運航サポート体制を整えている。こちらも15年5月の提携発効以来、既に約100件の整備オーダーなどを受注し、出足好調だ。

こうした需要増を背景に、当社は15年初頭、中国における交換部品ストックを金額ベースで10%増の6億ドルに増強した。アジア太平洋の他拠点との連携で、中国には常に3000点の部品を即時供給できる」

Whenever BizCHINA, 2016年6月号, Dassault Aviation, ダッソー航空, パリ, Le Bourget, 空港, 整備

参考資料。パリのビジネスジェット専用国際空港Le BourgetにあるDFSの整備工場。年間200機以上の整備需要をさばいている。利用量の増大で、中国にも整備産業の基盤が形成されつつある

※2 ETOPS:双発エンジン機の洋上飛行に関する安全規制。エンジンの片方が停止した場合、一定時間以内に代替空港に着陸できる飛行ルートの設定を義務づけている。

 

【進む新品と中古機の使い分け】

(Dassault Aviationアジア太平洋本部Jean Michel Jacob総裁)

2015年、中国ではビジネスジェット購買の伸びが減速する一方、それまでハイエンド機種に偏っていた需要が中小型機や中古機にも広がり始め、注目を集めた。そのトレンドをいちはやくつかんでいたのがDassultだ。アジア太平洋本部のJacob総裁に聞いた。

──中国におけるFalconの需要は。

「現在、香港地区登録も含めて約50機が就航しており、そのうち約40機が現役最大機種の7Xだ。米国に次ぎ世界第2の需要規模となっている。14年に需要が急拡大したのち、15年は低迷したが、今は再び伸び始めている。8Xは今後5年で、中国で50機の需要を見込んでいる」

──中古機需要が現れていると聞くが。

「これまで中国では新品の大型長距離機に需要が偏っていたが、最近は価格や性能をにらんで、自社の利用ニーズに適した機材を選定するユーザーが増えている。経済の成熟とともに、企業イメージより実用性重視でビジネスジェットを購入する傾向が現れており、この面でも先進国に近づきつつある」

Whenever BizCHINA, 2016年6月号, Dassault Aviation, ダッソー航空, Falcon 8X, Jean Michel Jacob

Dassault Aviationアジア太平洋本部のJacob総裁

 

【Falconと日本の製造業】

Falconファミリーは日本の製造業とも深い関わりを持つ。Falconファミリーの開発技術から派生した3次元設計ソフトのCATIAは、今では世界各国の製造業現場に導入されており、日本でも自動車産業などで多用されている。フランスのジェット機技術が、日本の製造業の黒子的存在にもなっているわけだ。一方、本文中で写真紹介したパリのDFS整備工場は、日本の5Sを導入して生産性を改善させた。技術のフランス、マネジメントの日本──。大方のイメージと真逆の構図にも注目したい。



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