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編集レポート/衣食足りて求むものは─ 中国インセンティヴ事情


[ 2017-01-07 ]

ハーバード・ビジネススクールの機関誌Harvard Business Reviewは2016年7月26日付の記事で、製造業牽引型からサービス産業牽引型へと変化した中国において、金銭等の褒賞による従業員の動機づけは逆効果になるリスクがあるとして、新たなインセンティヴのあり方を論じている。動機づけにおける「家族」の重要性に着眼したFortune誌とともに、「働くことの意味」を問いかける内容だ。一方、スイスの再保険大手Swiss Reは、中国の企業文化を鏡に、自文明の企業のあり方を見つめなおそうと試みている。

 

コミッションが裏目に

「より健康的な食文化の創出を目標に掲げた、浙江省のミルク・メーカーの事例を見てみよう」と、Harvard Business Reviewの同記事は、企業戦略に対するインセンティヴのミスマッチがもたらした問題を紹介している。このミルク・メーカーは、より高品質な乳製品を世に送り出すことで顧客にメリットを提供し、長期的視野での持続的な成長を目指していた。一方で営業部門に対するインセンティヴは、月間の利益の一定比率を支給するコミッション型だった。

その結果、「営業部門は高品質で健康を追求した新製品ではなく、従来の売れ筋商品を売り込むことに熱心になり、結果的に同社は深刻な損失をこうむった」と同記事は語る。「売上連動型のインセンティヴは往々にして、従業員を短期的視野と即物的な損得で動く人材にとどめてしまうのだ」。

 

家族が誇りに思える企業へ

中国企業の行動は派手さがクローズアップされがちだ。CNNは15年5月11日付の報道で、6400人の大集団でフランスに社員旅行を繰り広げた天津のコングロマリット天獅集団を、面白おかしく取り上げている。中国企業の福利厚生では長らく定番だった社員旅行。このときは同社創立20周年記念イベントでもあり、南仏ニースではギネス記録を塗り替える巨大な人文字を描き、大規模なパレードを実施、4日間のフランス滞在中に消費した金額は1500万ドルと推計されている。

だがこうした派手さに目を奪われていると、中国の人々の心をつかむインセンティヴの本質を見誤るかもしれない。

Fortune誌は16年1月12日付の記事で、スターバックスが中国で成功した要因のひとつに、従業員の家族を“味方”につける努力があったと論じている。

スターバックスは1999年に中国に初出店し、現在は100以上の都市で2100を超える店舗を展開、従業員数は3万人を数える。

記事によればスターバックスは2000店達成時の記念事業として「従業員家族フォーラム」を開催するなど、家族に向けたアピールを徹底してきた。バリスタや管理職に対する毎月の住宅手当の支給や、勤続10年の従業員に提供する1年の研究休暇など、物的な面での福利厚生も充実させているが、それも「従業員とその家族が誇りに思える企業をつくり上げる」ためだ。

この“家族が誇りに思える企業づくり”という部分がキーワードとなる。

 

「人の役に立ちたい」

前述のHarvard Business Reviewの記事は、サービス産業主導型の経済へと移行し、複雑多様な顧客ニーズに応えていく創造的な仕事が求められる今の中国では、「金銭的なインセンティヴは時として生産性を悪化させてしまう」と指摘した上で、従業員の生産性向上のため企業がなすべき取り組みを挙げている。それは、「人の役に立ちたいという、人間の根源的な欲求に応える企業づくり」だ。

その第一歩が、「自社が、どのような顧客価値を創出する企業であろうとしているのか理解してもらうこと」。それによって、ひとつひとつの教育と訓練の意味も理解され、やがては経営者意識を持って先回り行動の取れる人材へと育っていく。いわゆる“やりがい”を軸にして、インセンティヴはそこに適時絡めていくというわけだ。「したがって問題は、“何をインセンティヴにすべきか”ではなく、“いかにインセンティヴを使うか”というデザインにかかっている」と記事は説いている。

スターバックスの“従業員と家族が誇りに思える企業づくり”に相通ずる主張といえよう。

 

省みる欧州

Harvard Business Reviewの記事が説くものは“帰属意識”と読み替えることもできるが、中国固有の企業文化からその重要性を学ぼうとしているのが、Swiss Reだ。15年5月26日付のレポートで、欧州と中国の文化的差異を切り口に、中国事業におけるインセンティヴのあり方と、ひいては欧米が再発見すべき企業マネジメントの姿を論じている。

同レポートはまず、個人主義の欧米と家族主義の中国という差異から、「欧米の人々が“目的を果たすために、いかに行動すべきか”を指針とするのに対し、中国の人々は“帰属する集団(家族)の一員として、いかに振る舞うべきか”を指針とする」と、人材の行動基準の違いを指摘。したがって中国でマネジメントに成功している企業は「従業員に、この家族(会社)の一員でありたいと思わせることができている企業」であり、それにはキャリアプランなども含めた人生設計へのサポートに加え、「従業員の私生活にまで気配りする家長的リーダーシップも求められる」と分析する。

その上で同レポートは、「こうした企業風土は、20~30年前には欧州にも存在していたが、米国式マネジメントが浸透した今日ではほとんど見られない。従業員が“やる気”を発揮できる企業づくりのためには、いかに従業員と絆を育むかを真剣に考えるべきだろう」と自文明に向けて問題提起している。



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